もう去年の話ですが。
世界で始めてPersonal Computerを生み出した会社が、その事業を売却すると最初に報じられたのはNew York Timesでした。朝出勤してそのニュースを見て、コーヒーをこぼしそうになった記憶があります。

リリースによれば、IBMは6億5千万ドルの現金と、6億ドル相当のLenovoの株式を受け取る。これにより、IBMはLenovoの株式の18.9%を所有し、第2位の株主となる。また、Lenovoは約5億ドルのIBMのPC事業の負債を引き継ぐ。これらの手続きは各方面の承認を得て、2005年第2四半期に終了する予定。
(PC Watch - 2004/12/07)


IBMは現在、ノートブックPC「ThinkPad」、デスクトップPC「ThinkCentre」(旧Aptiva)を世に出していますが、Hewlet-Packard(HP)同様かなりの苦戦を強いられています。では、誰が勝ち組なのか?そう、Dell Computerです。

米IBMが売却するPC部門が過去3年半の間に9億6500万ドルの赤字を計上したことが、米証券取引委員会(SEC)に提出された文書で明らかになった。
IBMはこの文書で、PC部門が2004年上半期に1億3900万ドル、2003年に2億5800万ドル、2002年に1億7100万ドル、2001年に3億9700万ドルの赤字をそれぞれ計上したと報告した。2001年は景気低迷でPC販売が不振を極めた年だった。
(ITMedia - 2005/01/05)


ここからちょっと私的考察に入ります。
IDCのレポートにもある通り、PC市場は既に製品ライフサイクルの成熟期に当たり、今までの市場成長率、PC企業の売上を維持する事は難しいと発表していました。理由は以下の点でしょう。

・製品が普及しコモディティ化した為、機能等での差別化戦略が意味を成さなくなってきた。それに従い、差別化のドメインを「価格」にシフトせざるを得なくなり、結果的に利益率が下がった。
・メモリ、CPUの飛躍的進化に伴い、R&Dから販売までのリードタイムの短縮が要求され、消費者ニーズに合う製品を出す為のコストが累積する体質になった。

何れにしろ、これは戦略的というよりはむしろ「不採算事業の売却」と見た方がよく、パートナーにLenovoを選択したのも「東芝に断られたから」と考えるべきでしょう。
実際、IBMは、システムインテグレーション、アウトソーシング等のサービス事業の方が収益性が高く、BtoCに元々それほど注力していなかったわけですから。

この流れは、IBMがHDD部門を売却した時の流れに酷似しています。

私が最後に一人で思う事は、これにより転籍となる多くのIBMのPC事業の社員が間違いなく、人員削減のターゲットになり、それがまた多くの労働紛争の引き金となるのではないかと懸念しています。

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