Shade of Winter

2003年12月25日
隅田川を渡る風の冷たさは厳しさを増して
川を渡る遊覧船に乗る人達の装いも
冬を遮る厚く重い色のコートに変わっていた

とうとう辞める時が来たんだな
何時も冗談交じりにしか言わないからさ

「Promotion関係のコンサルティング会社から
Offer Letter貰ってね
ここに此の侭留まるよりはマシだろうから」

同期のSは入社して以来 色々な事を話してきた
既婚者のSとは結婚が決まってから良く話すようになったし
羽田の仕事では煙草仲間でもあった

何時も冗談めいた言動で周囲を笑顔にしていた
その彼が本当に辞めてしまうと思うと
解っていても切なさが込上げてくる

最高の送別会を用意するよ
今回は六本木かな

「その辺はセンスに任せるよ」

夕暮れ過ぎた隅田川の向こうには
月島の高層マンション群の明かりが灯り
水面にその光が反射していた

2本目の煙草を消して煙の行く末を見守りながら
僕はSに一箱のMarlboro Mentholを差し出した

「何だよ、これ」

餞別だよ、色々世話になったから
貰い煙草の借りは全て返しとかないと
居なくなってからじゃ遅いだろ?

「律儀だよな...ホント」

真面目なだけだよ

Sは微かに笑うと冷たさを増した風を避けるように
首を竦めながら喫煙所を後にした

僕は感傷的になりすぎなのだろうか?
自分の仲間が次々と去っていき
その背中をこれから何回寂しく見つめるのだろうか

僕は次の煙草をパッケージから取り出し
空の包装を握りつぶし 煙草に火をつけた

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